夜明け直後のHSR九州には、ほんの一瞬だけ小雨が舞いました。
しかし、それは設営を進めるチームの手元をわずかに湿らせただけで、パドックが動き出す頃には空はすっかり明るさを取り戻し、路面もすぐに乾き切っていました。
九州特有の湿った空気の中でも、パドックには明るい笑顔が絶えません
今大会のグロム4クラスには、#33「師匠&見習い」にチーム員ほぼ全員が人生初参加という初々しいエントリーがあり、#100「コークハイ②」にも人生初レースを迎えるライダーが名を連ねます。
加えて#34「TEAM共立工業+夫婦」にはレン耐初挑戦の夫婦ライダーが並び、グロム5クラスにも女性ライダーが複数名エントリー。走り出す前から、この一日は「速い者だけの舞台」ではなく「挑む者すべての舞台」であることが伝わってくる、そんな空気に包まれた朝でした。
ビギナーブリーフィングでは、旗の見方、ピットインの合図、そして「無理をしない、楽しむ」というレン耐の合言葉が改めて共有されました。
10:05、日章旗が高々と振り下ろされ、11台のマシンが一斉に4時間の旅路へと飛び出していきました。
4時間耐久レース
スタート〜1時間:主導権争いの序盤戦
スタート直後、グロム5クラスでは#54「GOSHI Racing R&D」、#62「マルマエファクトリー」、#91「ぶどうやきにく」の3台が上位を形成する展開となりました。
グロム4クラスでは#34「TEAM共立工業+夫婦」がホールショットを奪い、#31「おやじレン隊ゴレンジャー」、#33「師匠&見習い」がこれを追う形でした。
しかし1周目からドラマは動きます。最終コーナーで#97「コークハイ①」が痛恨の転倒を喫し、コース脇に滑り出す一幕も。幸いライダーに大きな怪我はなく、マシンをチェックして再びコースへ復帰。長い4時間の入口で気持ちを切り替える姿には、パドックから静かな拍手が送られました。
スタート後1時間(11:05計測、気温27.6℃)の中間順位は次の通りです
グロム4:1位 #34「TEAM共立工業+夫婦」69周 / 2位 #31「おやじレン隊ゴレンジャー」/ 3位 #33「師匠&見習い」
グロム5:1位 #62「マルマエファクトリー」64周 / 2位 #54「GOSHI Racing R&D」/ 3位 #2「まごはち」
序盤から気温はぐんぐん上昇し、ドライ路面ならではの安定したグリップの中で、無理をせず確実にラップを刻んだチームが上位に顔を並べた印象です。
1時間〜2時間:修復と粘りのミドルスティント
10:43、#100「コークハイ②」がマフラー付近のボルト脱落によりピットイン。
11:56には再び転倒でヒヤリとする場面もありましたが、それでも走り続ける姿はまさにレン耐そのものです。ダメージを受けても最後まで走り切ろうとする気概が、HSRのピットレーンに漂っていました。
一方、この時間帯で観客とパドックの視線を一身に集めたのが、グロム4クラスをリードする#34「TEAM共立工業+夫婦」でした。
ライダー交代のたびに、ヘルメットのバイザーを上げてお互いを気遣う一言、汗を拭うタオル、そっと差し出されるドリンク。そのひとつひとつに、夫婦ならではの息の合ったチームワークが滲みます。
そして何より驚かされたのは、奥様のスティントでした。ホームストレートを立ち上がる際のスロットルの開け方、1コーナーへの飛び込みで見せる思い切りの良いブレーキング、コーナー立ち上がりでの積極的なライン取り、まさに男勝りの走りを披露してみせました。
ピットから「ナイスラップ!」と声を掛けるご主人の表情には、驚きと誇らしさが同居しているようでした。
スタートから2時間経過時点(12:05計測、気温29.5℃)の中間順位は次の通りです
グロム4:1位 #34「TEAM共立工業+夫婦」/ 2位 #32「野口亭」/ 3位 #33「師匠&見習い」
グロム5:1位 #62「マルマエファクトリー」/ 2位 #54「GOSHI Racing R&D」/ 3位 #2「まごはち」
この時点で#34と#62は依然として先頭に立ち、快走を見せます。ただし、レン耐の面白さはここからです。
2時間〜3時間:ダブルペリアが呼び込む逆転劇
中盤、恒例のダブルペリアハンデが発表されました。
グロム5クラスは#1、#2、#91、#97にそれぞれ+5周が加算。グロム4クラスは#32と#100に+24周、#33に+21周、#31に+9周のボーナスラップが与えられました。
このハンデ加算により、順位図は一変しました。
3時間経過時点でグロム4は#32「野口亭」がトップに立ち、#33、#31が続く猛チャージの展開となりました。グロム5クラスでも#2「まごはち」がトップへと返り咲き、#62、#54とのつばぜり合いは終盤に向けて激しさを増していきます。速さで押し切るだけでは勝てず、周回管理と粘り、確実な“持ち味”がすべてを左右します。このハンデ制こそがLet’sレン耐最大のスパイスであることを、改めて感じさせる時間帯となりました。
終盤〜チェッカー:地力と粘り、そして4時間の重み
残り時間が迫るにつれ、13:11、13:36と再び転倒の報が入ります。それでも各チームはピットで冷静にマシンを立て直し、コースへと送り出していきました。「無理はせず、しかし走り切る」このバランスを取り続けたチームこそが、最後に笑うことになります。
グロム4クラスは、ハンデを跳ね返す走りで#34「TEAM共立工業+夫婦」が終盤も一切ペースを緩めず、最終ラップまで安定したラップを刻み続けました。奥様が刻んだ強気のスティントがそのままアドバンテージとなり、ご主人が締めくくる終盤のスティントも冷静そのものでした。夫婦の絶妙な交代タイミングと、遠慮のない攻めの走りとが噛み合い、堂々の逃げ切りで優勝を飾りました。
#32「野口亭」がハンデを味方に2位、#33「師匠&見習い」は人生初レースとは信じがたい健闘で3位表彰台へと駆け上がりました。
グロム5クラスは#2「まごはち」が275周でチェッカー。
#62、#54が最後まで速さで火花を散らし、#54は43.537秒のクラス&総合最速ラップを叩き出しましたが、4時間を通じた総合力で#2が僅差の勝利をつかみ取る、ドラマチックな幕切れとなりました。
FINAL RESULTS
GROM5クラス
| 順位 | No. | チーム名 | 周回数 |
|---|---|---|---|
| 1位 | #2 | まごはち | 275 Laps |
| 2位 | #62 | マルマエファクトリー | 268 Laps |
| 3位 | #54 | GOSHI Racing R&D | 263 Laps |
GROM4クラス
| 順位 | No. | チーム名 | 周回数 |
|---|---|---|---|
| 1位 | #34 | TEAM共立工業+夫婦 | 280 Laps |
| 2位 | #32 | 野口亭 | 277 Laps |
| 3位 | #33 | 師匠&見習い | 276 Laps |
人生初レースクラス
| 順位 | No. | チーム名 |
|---|---|---|
| 1位 | #33 | 師匠&見習い |
| 2位 | #100 | コークハイ② |
★ 特別賞
受賞: #33「師匠&見習い」
チーム員ほぼ全員が人生初参加でありながら、最後までチェッカーを目指してひたむきに走り抜けたその挑戦の姿勢が高く評価され、受賞となりました
総括
序盤は主導権争いの慎重な立ち上がり、中盤はマシントラブルと転倒に耐える粘りの時間、そしてダブルペリアが動かした終盤の逆転劇。
そのすべてに、レン耐らしいドラマが詰まっていました。
グロム4を制した#34「TEAM共立工業+夫婦」は、レン耐初参加ながら夫婦ならではの仲睦まじいチームワークで栄冠を掴み取りました。
とりわけ奥様が見せた男勝りの走りは、パドックのあちこちから「速い!」「攻めてる!」と歓声が上がるほどで、女性ライダーの可能性と、夫婦で戦う楽しさの両方を、この4時間の中で見事に体現してみせました。
グロム5を制した#2「まごはち」は、派手さこそなくとも一切崩れないラップの積み重ねで4時間の重みを味方につけました。
そして、チーム員ほぼ全員が人生初参加でありながら3位表彰台と人生初クラス1位、さらに特別賞までを掴み取った#33「師匠&見習い」の走りは、まさにLet’sレン耐が掲げる「誰もが気軽にレースを楽しめる場」を象徴する一幕であり、その姿勢こそが、Let’sレン耐の本質です。
転倒しても直して戻る、初めてでも堂々と挑める、夫婦でも仲間同士でも本気で走れる、そして速いだけでは勝てない——HSRの一日は、そのすべてが凝縮された、忘れがたい西日本シリーズ第5戦となりました。
RACE DATA
- 開催名称:西日本シリーズ第5戦 Let’sレン耐 HSR九州ドリームコース 4時間耐久
- 開催日時:2026年6月28日(日)
- 開催場所:熊本県・HSR九州ドリームコース
- コンディション:天候:晴れ / 気温 スタート時22.4℃ / 1時間経過27.6℃ / 2時間経過29.5℃ / コース状況:ドライ
- 参加台数:Grom5 6台・Grom4 5台 (合計 11台 / 42名)